ゲーテとカフカの名言集を読んだ その2

(ひとつ前の記事の続きです)

紹介されているエピソードにも、何度も心をわしづかみにされました。

菜食主義のカフカは、医者のすすめで肉食をしなければならなかった時があったそう。
それをやめた後で水族館に行ったカフカは、うれしそうに魚にこう話しかけたといいます。
「さあ、これでまた君たちの目を安心して見られるよ。」
・・・カフカーーーーッ!!!

(ちなみに私は、ときどき鮭とか食べながら、
この鮭は生きているときにどんな海や川でどんな風に泳いでいたのかな〜?
とか時々想像するのですが、水族館で魚の目は見られます(笑))。

また別のエピソード。
あるときカフカが恋人のドーラと散歩をしていると、
人形をなくしてしまって泣いている少女に出会ったそうです。
カフカは、人形はちょっと旅行に出ただけなのだと少女に話し、
人形が旅先から、自分の冒険を綴って送ってくるという設定で手紙を書いて、
その翌日から毎日、その手紙を少女に渡すようになりました。
カフカはその手紙の結末をどうするか悩んだ末、
人形が遠い国で幸せな結婚をするという風にまとめたそう。
手紙を読み、少女は人形ともう会えないことを受け入れたのだそうです。

ドーラによると、カフカは小説を書くのと同じくらいの真剣さで
手紙を書いていたといいます。3週間。
そのときカフカは重い病気にかかっていて、
それから一年経たないうちに亡くなったそうです。
カフカ・・・。どんなときでも、泣いている人、傷ついている人を放っておけないんだね。。。

訳者であり編者でもある頭木氏の解説文などからも、
氏の、力をなくしている人や弱っている人に少しでも寄り添いたいという気持ちを強く感じました。

絶望や希望について語る時って、大げさになったりセンセーショナルになったりして
文章が妙に熱っぽくなってしまうことってよくあると思うのだけど、
(文章によっては、その妙なテンションが好きだな〜、という場合もある)、
頭木氏の文章は冷静というか落ち着きがあって、同時に温もりがあり、いいな、と思いました。

また、ゲーテカフカや、文学そのものへの深い愛情が感じられ、
その愛情は、読者にまで及んでいると感じました。
なんか、ロックのすごくいいCDを聴いたときにも感じる、それ。その、愛情。

それにしても、カフカのハンパない絶望ぶり・・・。
相当に生きづらそう。
なんとかしてこの人をちょっとでも幸せな気分にできないものか、とも思ってしまったけど、
あぁでもカフカは既にこの世にいないから全然間に合わないよ。。。
お目にかかりたかったなぁ、カフカ