ひとしずく

久しぶりに加島祥造氏の『LIFE』を読んでいる。おととい本棚を整理している時に、久しぶりに手にとったのだった。
加島氏は詩人で、老子の思想にも造詣が深く、「伊那谷老子」と呼ばれているそう。
晩年の入り口で画作を始めたそうで、その絵に、ご自身の作った詩や、老師をはじめとする人々の言葉を書きこんで作品にしているという。
この『LIFE』は、そんな氏の描いた絵に筆で書きこまれた言葉と、その解説から成っている。書の内容は美しいしずくのようであり、自然にエッセンスという言葉が思い浮かんでくる。
私は今まで本などを通してこのような恵みのしずくをたくさん受け取ってきたが、これら様々なしずくの大元は多分一つで、静かで深い海のようなものなのだろうと、このような滋味深い作品にふれると感じる。
今日、特に目に留まった文章(解説文の方)を少し引用させていただくことにする。

 
 偶然とは計画外なので受け容れにくいけれど、偶然はどこか高いところから来るのであり、そこにははかりしれない深い知恵が働いている。
 (p. 38-39)

 しかし私達の毎日は、騒がしい活動のあとには、静かな眠りがやってくる。この日々の小さな繰り返しは、やがて、死という大きな静けさへとつながってゆく。この大きな静けさをどこかで感じながら、日々の小さな繰り返しのリズムを大切にしたらいい。老子から学んだ言葉だ。(p.20)


引用した一つ目の文章を読むと、レイモンド・カーヴァーの小説が思い浮かぶ。カーヴァー作品の重要な要素の一つは「偶然」だと思う。
そして、二つ目に引用した文章を読むと思い浮かぶのが、サリンジャーの小説や、小沢健二のアルバム「犬は吠えるがキャラバンは進む」。やはり、すごい力をもったしずく達だ。
加島氏のこの文章に、ものすごく自由を感じる。力づけられる。

「日々の小さな繰り返しのリズム」を大切にする方法は、星を眺める、野草を摘んで暮らしに生かす、三度の食事を大切にする、など、人によって様々だろう。私はアロマテラピーが好きなので、香りを活用していきたいと思う。