続く

年末に大瀧詠一さんの訃報を聞いてから、ずっとさみしい気持ち。
頭の中で流れている彼の曲を、時々声に出して歌ってみる。
それらの曲は、いつもテレビやラジオから流れていて身近にあったのだと気づいた。

年末から、サンボマスタ―の山口さんと大瀧さんの対談が収録されている『叱り叱られ』を、久々に読み返している。これは、山口さんと、山口さんが敬愛するミュージシャン(山下達郎さん、佐野元春さん他)との対談集。

叱り叱られ

叱り叱られ

これを読んでの大瀧さんの印象は、へそ曲がりで心優しい音楽家。このおじさんが、あの潮風が吹き抜けるようなキラキラしたサウンドを作っている方と同一人物とは到底思えないんだけどな(笑)。
もしも、もしもだがこんなことを本人に面と向かって言ったとしても、大瀧さんは怒るどころかニヤリと笑って、こちらの投げたボールを気のきいた毒舌で、ちゃんと打ち返してくれるような気がする。

大瀧さんと山口さんは、この対談で初めて会ったらしいが、本当に気が合っている。

  山口 「僕らに目をつけてくれたのはいつですか?」
 大瀧 「昨日くらいかな。」(P. 45)

冒頭のこの掛け合いからして最高。

サンボマスターのCDもらって、全部三秒くらいずつ聴いたけれども(笑)、〜」(P. 55)という大瀧さんの台詞も最高で、私は、悲しいながらも少し笑ってしまった。

山口さんの方も負けてはいない(笑)。

 山口 「大瀧さんは、再評価されてると聞いて、どうでした?」
 大瀧 「やだよ、そんなの。再評価されたの?」
  山口 「五、六人はしてました。」(P.59)

大瀧さんが来し方を語っている部分もたくさんある。大瀧少年は、学校の先生に作ってもらったラジオでプレスリービートルズビーチ・ボーイズなどを聴いていたそうだ。

対談の後半、山口さんは大瀧さんに、新曲を作らないのはテクノロジーの問題が大きいからなのかと、気遣いつつも質問している。それに対し大瀧さんは、そんなことはないが、やりたくない、説明は難しい、という内容を話している。

山口 「充分遺産はありますからね。」
大瀧 「遺産(笑)。もう俺のことはいいから、自分のことを伝道してくれればいいよ。 君の中に俺があるのなら、それを魂に入れて、俺が唸るようなやつを作ってよ。」
山口 「大瀧さんが唸るようなやつって、大瀧さん唸らねえもん、だって」
大瀧 (大笑い)「俺も、こっちのキャラでいかないつもりだったんだけどね。君をみてたら、つい心を許しちゃってね、このもみあげの剃り跡に。〜(以下略)」(P.90)

たくさんのミュージシャンの中に大瀧さんの音楽があることだろう。「それを魂に入れ」て作られた曲が、これからも世に流れていくと思う。