「ルーキー」のビート

最近、サカナクションの DVD を購入して、少しずつみています。

あ、DVD ではなく、初めてブルーレイのディスクを買ったのだった。
サカナクションのライブは、照明などもすごくいい、と耳にするので、そうしてみました。

アイデンティティ」で登場する山口一郎人形には、毎回見入ってしまいます。

この曲もすごく好きだし、あと、「エンドレス」と「ルーキー」が、私は特に好きです。
「ルーキー」の歌詞の中に「花びら」「風」「さよなら」ということばが出てくるからでしょう、
最近は、桜の花びらで一杯の歩道を歩いているとき、この曲が頭の中で自動再生されます。

この曲の主人公は、過去の記憶に囚われていて、まだそこから抜け出せないでいるみたいだけど、
曲のビートの方は、どんどんどんどんどん、先に進んでいってしまう感じだな、と思います。
ココロの方は、ある時点から、その先に進めなくなってしまっても、時間だけは容赦なく先に進んでいってしまう、あの感じ。

この曲をきくと、私は、フィッツジェラルドの小説「グレートギャツビー」のエンディングを思い出してしまいます。
引用してみます。


  だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶えず過去へと押し流されながらも。

     スコット・フィッツジェラルド著、村上春樹訳『グレート・ギャツビー』p. 325-326

 原書だと "So we beat on, boats against the current, borne back ceaselessly into the past." と書いてあり(PENGUIN BOOKS のペーパーバックより)、"beat" という単語の使い方が面白いな、と思いました。

この文章は、作品の最後の最後、締めくくりの部分なのですが、小説には珍しく現在形で書かれている所に、妙なリアリティを感じます。
この曲の歌詞には、まだ過去にこだわっているような言葉がちりばめられているけれど、同時に始まりの予感に満ちた雰囲気を、不思議と感じます。
歌詞の中に「羽ばたいて」という言葉があるからなのかな。あと、シンセの音が、未来を感じさせるかのようで。